心のなかで何度も何度もお礼を言いつつ、わたしはエレン様をがっつり見つめた。だって、この機会を逃したらこんなふうに手を握っていただけて、しかも名前を呼んでもらえる機会なんてないに違いないんだもの。しっかりと目と心に焼き付けておかなきゃ、だ。


「それでなヴィヴィアン、先ほどの話の続きなんだが」


 お父様の声にハッとする。


(なんの話だったっけ?)


 わたしは居住まいを正しつつ「はい」と小さく相槌を打った。


「喜びなさい。エレンをおまえの結婚相手に選んだんだ」

「…………はい?」


 お父様がニコリと笑う。次いでエレン様に視線を移すと、彼は困ったように微笑んだ。


(喜びなさい? エレン様が、わたしの、結婚相手に……って!)

「嘘でしょう⁉」


 どうしよう、どうしよう、どうしよう! どうやらとんでもないことが起こってしまったらしい。わたしは驚愕に目を見開いた。