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 カフェは魔術師団から徒歩5分、大通りにあった。

 藍色の屋根に白い建物、シンプルでオシャレな店構えで、建物のいたるところに金色と藤色で魔法陣とよく似た模様が彫られており、品よく華やかな印象を受ける。店先には季節の花――――ユリの花が飾られていて、店の雰囲気にとても合う。貴族の別邸だと言われても、素直に納得できる建物だった。


「いい雰囲気の店だろう?」

「そうですね」


 自分とかけ離れた場所にいると気疲れする。ここならゆったりと落ち着けそうな印象だ。
 それにしても、帝都の一等地にこれだけ大きな店を構えるのは大変だろう。オーナーは余程の金持ち――――おそらくは貴族だろうと察した。


「いらっしゃいませ」


 店に入るなり、小気味よいベルの音と、明るく元気な声に迎え入れられる。


「何名様で――――っ!」


 けれど、現れた店員は俺の顔を見るなり、口元を押さえてうずくまってしまった。


「大丈夫ですか?」


 具合でも悪いのだろうか? 駆け寄って体を支えたら、店員の女性はえぐえぐと涙を流していた。