「しかし、一体誰がこんな多額の寄付を?」


 魔術師団は数ある公的機関の一部に過ぎない。人助けはするけれど、それはあくまで仕事であり、あたり前のことだ。こんなにたくさんの寄付をもらうような機関ではない。
 このため、当時は贈り主が誰なのかちっともわからなかった。


 しかし、寄付はその一度きりではなく、以降も定期的におくられてきた。水や食料、ローブに魔法石。それから『建物や設備を新調してほしい』と工事業者がやってきたことだってある。そのたびに、俺へのメッセージカードが忘れず添えられていた。


(本当に、誰がこんなことを?)


 そんなことが2年も続けばさすがに贈り主が誰なのか気になってくる。

 だから俺は、調べたのだ。寄付と一緒に贈られてきた大量のローブを発注したのが誰なのかを。

 魔術師のローブを用意できるのは、限られた業者だけだ。布にも刺繍にも、特殊な魔法が施された糸が使われており、一般人が気軽に注文できるものではない。ツテがなければ、業者にたどり着くことすらできないのだから。