ヴィヴィアン様は本当に愛らしく、そして美しいお方だ。当時まだ12歳だったというのに、凛として気高く、上品で、幼いながら完成された美しさを誇っていた。帝国の華――――そんな愛称がよく似合う。彼女の存在は、魔術師団員たちにとってとても大きなものだったのだ。


「なんだか寂しくなりますね」


 そう口にはしたものの、誘拐されたばかりのヴィヴィアン様がしょっちゅう城外を出歩くことも心配だった。同僚たちに見えないところでこっそり胸をなでおろしたものだ。


 それからほんの数日後のこと、魔術師団に対し、匿名で多額の寄付が寄せられた。加えて、訓練用のローブや靴、魔法石など、大量の贈りものが添えられていたのだ。
 それらはすべて魔術師団宛の寄付ではあるのだが、どういうわけか、メッセージカードには俺の名前が書かれていた。


『エレン様へ――――どうか訓練に役立ててください』


 書かれていたのはたったひと言。けれど、今考えれば、なにも書かないことで当時下っ端魔術師だった俺に恩恵がないのが嫌だったのだろう。