ついつい早口でまくし立ててしまったところで、わたしはハッと目を見開く。この場には何十人もの貴族の令嬢、令息が揃っている。しかも、エレン様はわたしの結婚相手と思われているんだもの。みんながめちゃくちゃ注目している。いつの間にかライナスはちゃっかりフェードアウトしているし。わたしはキリリと居住まいを正した。


「わざわざありがとう。だけど、今はお茶会の途中だし、わたしはこのあとも公務が詰まっているの。話をするのは別の日に改めてもらえると嬉しいのだけど。もちろん、エレン様がこのままお茶会に参加すること自体は構わないのだけれど」

「そうですか。けれど……俺はヴィヴィアン様以外の女性と結婚するつもりはありませんので、ここでお相手探しをするというのはちょっと……」

「……! それは、その…………」


 やっぱり――――さっきライナスに話したこの茶会の目的を、がっつりエレン様に聞かれていた。気まずさや申し訳なさのあまり、胸がズキズキと痛む。そんなわたしを知ってか知らずか、エレン様は手をギュッと握ってきた。


「それにしても、女性だけでなく男性もたくさん招待していらっしゃるご様子。……どうしてですか? 俺はお招きいただけなかったのに……」

「そんな! それは、えぇっと……」


 どうやらエレン様はライナスとの会話をはじめから聞いていたわけではないようだ。
 危なかった――――いや、わたしがなにをしようとしているのか、早めに知らせたほうがいいのかもしれないけど、お茶会に招待しなかっただけでこんな表情をなさるのだもの。今、このタイミングで真実を打ち明けるなんてわたしには無理。エレン様を不用意に傷つけたくない。下手すればわたしの心臓が砕けてしまいそうだから。