「しかし、武力や魔力を兼ね揃えている人間はそういないだろう。女として生まれたおまえに必要なのはなにより力だ。それはわかるだろう?」

「――――わかっているわ」


 女、子供の力っていうのはどうしたって男性よりも弱い。わたしの隣に並び立つ人には、わたしに足りない部分を補って貰う必要がある――――だからこそ、最強魔術師であるエレン様が適任なのは間違いない。間違いないのだけど。


「でもでも、皇城内では魔法は使えないじゃない?」

「だからなんだ? 必要なのは有事の際に力を振るえることだ。おまえならわかっているだろう?」

「そうだけど! 力を重視するなら、武力に優れた男性でもいいわけで、エレン様じゃなきゃいけないってことはないんじゃ……」

「言っただろう? おまえの夫には、この国で最高の男性を迎えたい。この国を――――ヴィヴィアンを最も幸せにしてくれる男を選びたいんだ」


 お父様は言いながら、わたしに向かって身をかがめる。それから、ぶっきらぼうな手付きでわたしの頭をそっと撫でた。