「どうやら、無事に誤解はとけたようだな」


 わたしを見るなり、お父様はそんなことを口にした。どこか怪訝な、呆れたような表情だ。

『おまえは、エレンのことになると周りが見えなくなる』とでも言いたいのだろう。
 わたしがエレン様に熱狂しているのは昨日今日の話じゃないのに、なんだかムッとしてしまう。


「……ええ、まあ。お父様がエレン様にわたしとの結婚を強要したわけじゃないってことはわかったわ」


 わたしがお父様との会話を勝手に打ち切ったとき、お父様はまだなにかを伝えようとしていた。あれはわたしに、エレン様がこの結婚を望んでいることを伝えたかったのだろう。聞いたところで信じられなかっただろうし、結果はなにも変わらなかっただろうけど。


「エレンとの結婚がおまえへのいい誕生日プレゼントになるだろうと思ったのは事実だ。だが、そもそもこの結婚はあいつ自身が望んだことであり、褒賞だ。今さらなかったことにはできない。そもそも、私にはおまえが結婚を嫌がる理由が理解できないよ。皇族や貴族が好きな人と結婚をできるなど、奇跡に近いことなんだぞ?」


 お父様はため息をつきつつ、わたしのことをじっと見つめる。