「ヴィヴィアン様は世界で一番愛らしく、美しく、賢くて慈悲深い、素晴らしい女性です。あなたこそが帝国そのものであり、法律であり、僕の全てです。そんなヴィヴィアン様と結婚できるエレンは、世界で一番の幸せ者です。かわいそうだなんて、とんでもございません」


 どこか興奮したような面持ちで主張するのはジーンだ。わたしに負けず劣らずの熱弁っぷり。まるで鏡を見ているような気分だ。


(ごめんね、ジーン。気持ちはありがたいけど、残念ながら解釈違いだ)


 わたしは小声で「ありがとう」と答えておいた。


 ものごとっていうのは、価値基準をなにに設定するかによって180度見方が変わる。

 わたしの基準はいつだって最高で最強のエレン様だ。彼を基準に設定したら、皇女なんてその辺にゴロゴロ転がっているただの人間でしかない。

 対して、ジーンにとっての価値基準は常にわたしだ。わたしを最上位に置いているから、エレン様のことをついつい下に見てしまうらしい。
 そんな価値はわたしにはない――――と言いたいところだけれど、本当はジーンのほうが正しいのかもしれない。皇女って皇帝の次に偉いし、謝っちゃいけない存在だし、わたしのひと言で簡単に人は死ぬもの。