正直言って、未だに信じられない。
 だけど、わたしの机の上には今、エレン様直筆の手紙が広げられている。

 そこには昨夜の会話は夢ではないこと、彼がわたしとの結婚を望んでいること、今夜は登城できずに申し訳なく思っていること、改めてゆっくりと話がしたい旨が綴られていた。

 本当ならば『なにかの間違いだ』って一掃したいところ――――けれど、これは間違いなくエレン様からの手紙だ。
 美しすぎる筆跡は、紛れもなく彼のものだし(過去に彼が作成した書類全てに目を通したのだから間違いない。っていうか、こんな流麗かつダイナミックな文字、エレン様以外に書けないもの)、便箋から大好きなエレン様の香りがする。それに、エレン様が大好きなユリの花束まで添えてくださったのだから、これは絶対にエレン様からの贈りものだ。

 たった2日の間に、我が国の国宝が増えてしまった。髪飾りにドレス、エレン様直筆のお手紙にユリの花束だなんて、最高がすぎる。

 嬉しい――――けれど、その分だけ複雑な気分だ。


(これがただの誕生日プレゼントだったら、素直に喜べたのに)


 ワッと机に突っ伏したわたしの背後から「それは違います!」という野太い声が聞こえてきた。