「ジーン、ヨハナ、噂がどこまで広まっているか、調査しといてくれる? それから、これ以上噂が広まらないよう対処のほうもお願い。わたしもお父様も、婚約を正式発表してないんだもの。無責任に噂を広めないよう、釘を差しておいて」

「はい、ヴィヴィアン様」


 ふたりは文官じゃなくて護衛騎士と侍女だけれど、とっても優秀だし、心から信頼できる人材だ。彼らは他の人間にスムーズに仕事をおろし、わたしが望む形で実現し、適切に報告をあげてくれる。直接指示を出すより早くて確実なので、二人に采配を振るってもらっているのだ。


「それにしても、まさかエレン様とご婚約が決まるとは……私たちもさすがに驚きました。人間、強く願えば叶うものなのですね」


 ヨハナは言いながら、顔をクシャクシャにしてうなずいている。わたしはムッと唇を尖らせた。


「願ってない! 叶ってない! ヨハナまでそんなことを言うなんて……ひどいわ! 人が大ダメージを受けているときに、悪い冗談はやめて! あなたならわかるでしょう? わたしがどれだけエレン様を――――彼の幸せを想っているかを! それなのに、わたしがエレン様の結婚相手だなんて……エレン様が気の毒だわ! かわいそう! しかも、噂までこんなに広まっちゃうし」