皇女の誕生日会っていうのは、実は当日だけでは終わらない。帝国を上げての一大イベントだし、遠方からのゲストが集ういい機会だもの。一週間に渡って昼間はお茶会、夜は夜会が延々と繰り広げられる。
 つまり、その間は普段よりもたくさんの貴族が帝都に集まり、そしてとどまる。
 その結果、エレン様の仰っていたとおり、わたしたちの結婚話はまたたく間に貴族たちに広まりまくっていた。


「皇女様、ご婚約、おめでとうございます」
「お相手は魔術師のエレン様だそうで」
「これで帝国も安泰ですね」


 茶会でも、夜会でも、わたしを見るたびにみんなが同じ話題を振ってくる。どいつもこいつも媚売りまくり、好奇心にまみれた嫌〜〜な表情だ。いちいち対処するだけ時間がめちゃくちゃ勿体ないので、適当にあしらってお茶を濁す。
 
 だけど、貴族に噂が広まっているっていうことはつまり、帝国全土に話が広まるっていうことを表している。これは由々しき事態だ。


(まあ、誕生日プレゼントに加えて婚約祝までもらえるのはありがたいけど。ワードローブが充実したし、その分エレン様の推し活費用に回せるもの)


 実際のところ、エレン様とはまだ正式に婚約を結んだわけじゃないのだから、彼らの行いは単なるフライングだ。無駄になる可能性大なわけだけど、勝手にしたことだから文句は言えまい。っていうかわたしが言わせないんだから。


(一応一日だけ様子を見てみたけど、これ以上は看過できない)


 エレン様の名誉のために、早急に動かなきゃだ。