「それは皇女の権力を最大限に活かせば、今からでもなんとかできるというか、無理やりなんとかするというか……」

「それに、ヴィヴィアン様との結婚は俺への褒賞ですから。俺自身が『別のものがいい』と言わない限り覆ることはありません。そして俺は別のものを指定する気は一切ありません。ですから、俺たちが婚約、結婚するのは既に決定事項です」

「えっ、そっ……えぇ⁉」


 あまりのことに脳内の情報処理が追いつかない。
 ただでさえパニック状態だったのに! 状況を飲み込むだけで精一杯だったのに! エレン様のおっしゃることは、わたしの考えとはあまりにも相反していて。


(どうしよう……一体どうしたら――――)


 悶々と悩んでいたら、エレン様は爽やかすぎる笑みを浮かべながら、頬に触れるだけの口づけをしてきた。


「えぇ⁉」


 それはほんの一瞬のできごと。けれど、わたしの頬には確かにエレン様のぬくもりが、感触が残っている。わたしは驚愕に目を見開いた。