「ごめんなさい、ごめんなさい! わたしったら、エレン様に対してなんてひどいことを……」

「ヴィヴィアン様、皇女がそんなふうに謝罪の言葉を口にするべきではありません。俺は気にしていませんから、どうか落ち着いて」

「それじゃわたしの気が済まないんです!」


 瞳にじわりと涙が滲む。わたしは首を横に振った。


「では――――申し訳ないと思うなら、少しの間、俺の話を黙って聞いてくださいますか?」


 エレン様はそう言って小首を傾げる。その仕草があまりにも愛らしくて、普段とのギャップがすごくて、最高で、わたしは思わず言葉を失う。それを肯定の意味と受け取ったのだろう。エレン様は微笑しつつ、再び口を開いた。


「そもそも、この結婚は俺からの申し出によるものです。陛下から持ちかけられたものではありません」

(そんな馬鹿な)


 ついついそんなふうにツッコミを入れたくなるけど、さっきエレン様から黙って聞くように言われたもの。エレン様に嫌われたら生きていけないもの。わたしは必死で口をつぐんだ。