「実はなヴィヴィ、今夜はおまえに大事な話があるんだ」


 わたしが決意を新たにしたその瞬間、お父様が急に改まった様子でそんなことを言い出した。


「――――ああ、結婚のことでしょう? ようやく相手が決まったのね」

「……! 驚かないのか?」

「別に、お父様はある程度そういう素振りを見せてくれていたし、わたし自身そろそろだろうと思っていたもの。特段驚くことじゃないわ」


 わたしももう16歳。お母様が早死したせいで兄弟がいないから、わたしが次期皇帝になる予定だ。
 本当はお父様には今からでも遅くないから再婚してほしいところだけど、本人の意思が固いから無理だろう。だから、さっさと身を固めて国を安定させるために頑張らなきゃなぁと思っているのだけど。


「とはいえ、結婚相手に最低限求めたい条件があるの。一応事前に伝えておいたつもりだけど」

「分かってる……エレンの推し活のことだろう? 大丈夫だ。先方はおまえの行動をとめることも、咎めることもしないよ」

「本当に? だったらいいわ! 相手は誰でも構わないから、お父様が決めた相手と喜んで結婚させていただきます。っていうか、どうせライナスが相手なんでしょう?」


 言いながら、わたしはチラリと視線を動かす。
 ライナスっていうのはお父様の弟の息子で、つまりはわたしのいとこだ。
 年齢も同じだし、皇帝の血を引いているし、優秀で美形だから、彼がわたしの夫になるんだろうって前々から予想していた。他にも候補がいないわけじゃないけど、わたしの提示した最低条件を満たす人かどうかを見極める時間とかを考えたら、彼を選ぶのが手っ取り早いもの。