(会いに来るキッカケができて嬉しいです、か……)


 元々エレン様はわたしに対して甘い人だったけど、ここ最近、糖度が格段に上がっている。なんなら殺しにかかっている。
 わたしを恥ずかしがらせて、照れさせて、喜ばせて、それを見て楽しんでいるのだ。
 ヒドい――――だけど、悲しいかな。わたしはそんなエレン様も大好きなのだ。


「だって俺、ヴィヴィアン様には一生『俺と結婚したい』って思っていてほしいですし。そのためには日々、ドキドキしてもらわないとでしょう?」


 悶々としているわたしに対し、エレン様はさらに追い打ちをかけてくる。全身がカッと熱くなって、わたしは思わず両手で顔を覆い隠した。


「言わないで〜〜! わたしまだ、自分のなかの解釈のズレを完全に埋められたわけじゃないんだもん!」


 エレン様に逆プロポーズした今でも、わたしは自分がエレン様にふさわしいと思っているわけじゃない。

 エレン様は至上で、最高最強で、誰よりも素晴らしい人で、結婚なんて概念が馴染む人じゃないっていう想いは今も残っていて。

 だけど、それでもエレン様がいいって、好きだって――――絶対、他の人に渡しちゃいけないって思ってしまったんだもん。結婚したいって思ってしまったんだもん!

 だったら、解釈を埋めるための努力を――――わたし自身がエレン様にふさわしくなるための努力をしたほうが建設的だ。
 わたし、推しのための努力は惜しまないタイプだし。エレン様のためなら、いくらでも頑張れるし。
 多分、頑張っていたら理想の人物像に近づけると思う。というか、そう願いたい。