「情けなくなんてないよ。可愛い。ヴィヴィアンも、ヴィヴィアンの文字も、全部可愛い。俺はこのままがいいんだけど、それじゃダメ?」

「エレン様……ズルい」


 そんなふうに言われたら、もうなにも言えない
 だって、皇女としてのわたしだけじゃなくて、本当のわたしが好きだって、大切だって言ってくれてるわけでしょう? 

 嬉しくて、恥ずかしくて。これは夢じゃないのかな? って疑ったりなんかもして。
 だけど、この手のぬくもりは、嬉しそうな笑顔は、間違いなくエレン様のものだ。


(ああ……わたし、本当にエレン様と結婚するんだなぁ)


 結婚――――といっても、わたしはまだ16歳になったばかり。実際のところは、これから約2年間の婚約を経て成婚という流れになる。

 その間、エレン様には皇配教育なるものが施されるらしい。
 そんなの絶対いらないのに。なんならこちらがエレン様に教育されるべきだっていうのに――――そんなふうに文句をたれていたら『ヴィヴィアン様に会いに来るキッカケができて嬉しいです』なんてことを言われてしまった。