「――――ヴィヴィアンに会いに行ってやってくれないか? おまえが来るのを首を長くして待っているはずだから。結婚のことはヴィヴィアンから……あの子から直接聞いてくれ」

「……はい。そうさせていただきます」


 心臓がドクンドクンと騒ぎはじめる。覚悟はしてきたつもりだったが、いざそのときになると途端に足がすくんでしまう。


(情けないな……ヴィヴィアン様がどんな決断をしたのか、考えると怖い)


 己に苦笑をしつつ、息を吸う。けれど、なんと言われても俺の気持ちは決まっている。陛下に礼をしてから、俺は部屋を出た。

 陛下の執務室を出た俺は、すぐにヴィヴィアン様の私室へと向かった。取次を依頼してわずか数秒、すぐに部屋へと通される。ヴィヴィアン様は扉の直ぐ側で俺を出迎えてくれた。


「エレン様……!」


 ギュッと身体を包み込むぬくもり。泣いているのだろうか? 胸元がじわりと湿り気を帯びる。
 戸惑う俺を前に、侍女やジーンを含めた護衛騎士たちが黙って部屋をあとにする。室内は俺たち二人だけになった。

 気まずい沈黙。さすがにすぐには上手に言葉が出てこなくて、俺はしばし逡巡する。けれど、このままでは話が前に進まない。俺は意を決して口を開いた。