「っつ……!」
エレンの背中からバキッとという木刀の打撃音が響く。会場がにわかにざわついた。
「なっ!」
驚いたのは僕のほうだった。
当たると思っていなかった。むしろ、止めを刺されるものだと思っていた。それなのに、なぜエレンが膝をついている? なぜ僕は立っている?
「おい、今のは避けられた攻撃だろう? 一体どうして……」
そう尋ねはしたものの、エレンの視線は俺とはまったく別のところを向いている。こちらの声など聞こえてすらいない様子だ。
「エレン!」
「優勝は……あなたでいいです」
ようやく返ってきたのは、まったく思いがけないセリフだった。エレンは懐から魔法石を取り出し、誰かと会話をはじめる。
「――――はい。はい。俺もすぐに行きます」
「おい、待てよ。優勝が僕でいいって……ヴィヴィアン様のことは⁉ 僕が一体どんな想いで……」
けれどそのとき、視線を上向けた俺が見つけたのは、嫌というほど見慣れた模様――――ヴィヴィアン様がありとあらゆるものに刺繍をしていたエレンが得意とする魔法――――シールドの魔法陣だった。
エレンの背中からバキッとという木刀の打撃音が響く。会場がにわかにざわついた。
「なっ!」
驚いたのは僕のほうだった。
当たると思っていなかった。むしろ、止めを刺されるものだと思っていた。それなのに、なぜエレンが膝をついている? なぜ僕は立っている?
「おい、今のは避けられた攻撃だろう? 一体どうして……」
そう尋ねはしたものの、エレンの視線は俺とはまったく別のところを向いている。こちらの声など聞こえてすらいない様子だ。
「エレン!」
「優勝は……あなたでいいです」
ようやく返ってきたのは、まったく思いがけないセリフだった。エレンは懐から魔法石を取り出し、誰かと会話をはじめる。
「――――はい。はい。俺もすぐに行きます」
「おい、待てよ。優勝が僕でいいって……ヴィヴィアン様のことは⁉ 僕が一体どんな想いで……」
けれどそのとき、視線を上向けた俺が見つけたのは、嫌というほど見慣れた模様――――ヴィヴィアン様がありとあらゆるものに刺繍をしていたエレンが得意とする魔法――――シールドの魔法陣だった。



