その日の夜会が終わったあと、わたしはエレン様を自分の部屋にお連れすることになった。本当はとっても嫌だったけど! ご案内することになった。


(だって推しの頼みじゃ断れないもの。エレン様が願うなら、どんな無茶でも全部叶えて差し上げたいもの)


 もしもエレン様が世界征服を企む極悪人だったとしたら、わたしは彼のために権力を振るう稀代の悪女として歴史に名を残したかもしれない。推しへの想いは人を盲目にする。簡単には抗えないものだ。


 ややして私室の前に到着し、深呼吸を一つ。わたしは勢いよく扉を開け放った。


「ここがわたしの部屋よ。驚かないで――――って言われても難しいかもしれないけど、どうか冷静に――――くつろいでください」

「これは……想像していたよりも、ずっとすごいですね」

 
 エレン様はそう言ってひっそりと息を呑む。わたしは彼からそっと視線をそらしつつ、全身に冷や汗をかいた。