(持久戦に持ち込まれたら不利なのは僕)


 なにせエレンが速いのは体力ではなく魔力によるものだ。己の身体を風魔術でコントロールしているのだから、体力の消耗は僕なんかより圧倒的に少ない。もちろん、相手側の魔力の消耗度合いは僕にはわからないけれど。


(僕は強い! 世界で一番強い!)


 だから負けない。負けられない。

 だって僕は、ヴィヴィアン様の護衛騎士だから。世界で一番尊い人を守る盾なのだから。誰よりも強くなくてはならない。こんなところで負けたらいけないんだ。たとえヴィヴィアン様が僕の勝利を望んでくれなかったとしても。


「っ……」


 僕の攻撃スピードが落ちていくにつれて、エレンのスピードは逆に上がっていく。これまで避ける一方だったくせに、段々と応戦をされはじめる。

 このままではまずい。なにがあっても、刀を奪われてはならない。そうして他の騎士たちは破れてきたのだから。――――僕は木刀をギュッと握り直した。