「この大会を開催すると決めたとき、ヴィヴィアンが言ってたんです。『これは、エレン様以外にも皇女の夫にふさわしい人がいるんだってことを確かめるための作業なの。それが立証できたら、なにかが変わるかもしれないじゃない?』って。あいつの意図とは反対の形になりましたけど、立証されてしまいましたね。やっぱり俺、ヴィヴィアンにはエレン様しかいないと思います。皇女の夫にふさわしくて、あいつを一番幸せにしてやれるのなんて、あなたぐらいのものでしょう? 決勝、頑張ってください。どうか、ヴィヴィアンの側にいてやってください」


 ライナス様の願いは、いとことしてのそれなのか、はたまた別の感情が含まれているのか――――俺にはわからない。
 けれど、一つだけ確かなことは、彼がヴィヴィアン様の幸せを心から望んでいるということだ。


「――――ライナス様は、ヴィヴィアン様に似ていらっしゃいますね」


 好きなもののために一生懸命で、とても真っ直ぐな人だ。
 彼は困ったような表情を浮かべ「それって俺を好きってこと?」と尋ねてくる。


「そういうことです」


 俺がそう答えたら、ライナス様はハハッと声を上げ、目元をぐいっと乱暴に拭う。それから、ヴィヴィアン様とよく似た顔をして笑うのだった。