「ヴィヴィアン!」


 唇の血を拭いながら、ライナス様が声を上げる。胸がズキンと小さく痛む。深呼吸をし、俺はまたライナス様に向かっていった。

 木刀めがけて魔力を放つと、ライナス様の手元が大きく震える。神力が宿るのはあくまでライナス様の身体だけだ。俺が杖を構え直すと、ライナス様はキッと顔を上げた。


「エレン様! あいつは……ヴィヴィアンは! 案外子供っぽいところのあるやつなんです」


 俺めがけて、ライナス様が剣を振るう。俺は思わず目を見開いた。


「凝り性で、バカみたいに熱くて、好きなもの、自分が信じるもののためには、すぐに無茶をして周りが見えなくなるやつで……だから、隣にいる人間がストッパーになってやらないといけないんです! それからあいつ、自分でなんでもできるからって人を頼ることを忘れがちで! 甘やかしてやる人が必要なんです」 


 木刀と杖が激しく交わる。魔力を込めていなければ一瞬でへし折られていただろう。ライナス様の力強さが――――思いが伝わってくるようだ。