「いえ。求婚はもう何度もしましたから」


 俺は彼とは違う。
 こんな場面じゃなくとも、ヴィヴィアン様に想いを告げられるよう――――正式に求婚ができるよう、この一年半の間にきちんと実績を重ねてきた。
 勢いも、周りの声援なんてものもなくていい。特別な機会がなくとも、自力で土俵に上がることができるのだから。


「そうですか。けれど、いいんですか? 次の対戦相手である俺は皇族ですよ? 皇族は魔力を持てない――――それがなぜだかご存知ですよね?」

「――――皇族は神力を持って生まれてくるかわりに魔力を持てない。つまり、生まれつき、魔力の影響を受けづらい体質ということですね?」

「そのとおりです。もちろん、まったく影響を受けないわけではありませんが、一般人とは体質からして違います。エレン様は魔術師。俺との対戦は圧倒的に不利です。いいのですか? このまま戦って、後悔しませんか?」


 ライナス様が質問を重ねる。俺は首を横に振った。


「約束しましたから」


 そう言って審判に目配せをすれば、向き合うようにと指示がある。次いで「はじめ!」の号令がかかった。