「ありがとう、お父様……本当に、本当にありがとうございます。お父様は帝国はじまって以来の素晴らしい皇帝陛下です。わたし、今日ほどお父様に感謝したことはありません」


 ひっきりなしにやってくる挨拶の合間を縫って、わたしはお父様に耳打ちをする。
 今夜この会場にエレン様を招待してくれたのはお父様だ。わたし自ら推しを招待するなんて、おそれ多くてとてもできない。

 だけど、誕生日にエレン様の正装姿をひと目拝めたんだもの。どんな宝石よりも、ドレスよりも、ご機嫌とりの美辞麗句よりも、最高の誕生日プレゼントに決まっている。帝国の歴史に書き加えるべきだと思うほど素晴らしい所業だ。


「そう言うと思っていたよ。おまえは本当にエレンのことが好きなんだな」


 半ば感心、半ば呆れたような微笑みを浮かべつつ、お父様はわたしのことを見遣った。


「当然よ。エレン様はわたしの生き甲斐であり、生きる理由であり、酸素と同じレベルで必要なお方だもの。そもそも、今この場に生きていられるのだって、エレン様がわたしを助けてくださったおかげなんだから」


 エレン様の横顔を見つめながら、わたしはゆっくりと目をつぶる。

 彼を推しはじめて既に4年。ちっとも熱が冷める気配がないというか、永遠に冷めないでほしいというか、一生推し続ける気満々だ。こうしてエレン様のことを考えている時間が最高に幸せだし、人生が光り輝いている感じがする。今後、誰かに苦言を呈されたところで、考えや行動を改めるつもりはない。