(これまで一体、どんな想いでわたしを守ってくれていたんだろう?)


 いつもいつもエレン様のことばかり考えてたから。自分のことばかりだったから。わたしってば全然周りが見えていなかったのかもしれない。

 だからこそ、ジーンはこの重要な局面で、わたしに思いを告げることを決めたのだろう。彼の気持ちが、本気が伝わるように。わたしがちゃんと現実と向き合うように。
 

「――――その意気やよし」


 意を決してひと言そう口にすれば、会場は湧きに湧いた。
 ジーンは大きくうなずいて、それから脇へと捌けていく。


「いいのか? あんなこと言って。もしもエレンが負けてしまったら……」


 顔を正面に向けたまま、お父様が尋ねてきた。皇族の言葉は重い。公の場で発した言葉は取り消しが聞かないのだ。
 次の試合の対戦者が――――エレン様とライナスが決戦の舞台へと上がっていく。
 わたしは大きく息を吸い「ええ」と小さくうなずいた。