「我が君、ヴィヴィアン様に申し上げます!」


 その途端、闘技場全体がシンと静まり返る。今や会場全員の視線が、わたしたちに注がれていた。


「ヴィヴィアン様は僕の全てです! 心からお慕い申し上げております!」

(へ? ……へ⁉)


 なにそれ? 嘘でしょう? 
 お慕いしている⁉ え⁉ わたしを⁉ 本気で⁉ っていうか、それをこの場で宣言しちゃうの⁉

 呆気にとられているわたしを他所に、会場は大いに盛り上がった。どうしよう……そう思っていたら、ジーンは真剣な面持ちで再び口を開いた。


「ヴィヴィアン様、もしも次の試合で僕が勝ったら――――僕をあなたの伴侶にしていただけませんか? 僕の生涯をかけて、あなたをお守りしたいのです!」


 雄叫び、悲鳴にも似た歓声が闘技場全体を激しく揺らす。わたしはといえば、完全に困惑してしまって言葉がまったく出てこない。


(ジーン)


 寡黙で、温厚で、有能で、いつもわたしのわがまま(主にエレン様の推し活に関すること)を進んで聞いてくれて、とても気遣いができる自慢の護衛騎士。わたしのためならって、護衛以外のこともいろいろと手助けしてくれた。

 彼が皇族としてのわたしを敬い、大事に思ってくれていることは知っている。だけど、まさか結婚を考えていただなんて知らなかった。

 本当に、全然、全く気づいてなかった。っていうか未だに本気で信じられない。