「わたくし、元々はヴィヴィアン様の単推しにございましたが、エレン様のことを話していらっしゃるヴィヴィアン様は殊のほか愛らしく、尊く、ぜひともエレン様にヴィヴィアン様の熱い想いを知っていただきたいと思い、暗躍をはじめましたところ、日々お二人の距離が近づいてまいりまして! 一人でも尊いのに、お二人が揃うとさらに尊さが増しまして、互いに惹かれ合う様子がまたわたくしの喜びを加速させ――――」


 世の中にはありとあらゆるオタクが存在する。個人の熱狂的ファンになるものもいれば、特定の二人が揃っていることに強いこだわりと喜びを抱くものもいる。ヨハナは圧倒的後者だったということだ。


(まあ、なんとなーーく気づいてはいたけどね)


 わたしとエレン様との間に見えない力が働いているってこと。じゃなきゃ、エレン様がカフェのお客様になってくれるわけがないし。エレン様のスケジュールをタイムリーに把握できるはずもないし。色々とわたしに都合よくものごとが運びすぎなんだもの。


 ……まあ、ヨハナのおかげでエレン様のこと、たくさん知ることができたし、わたしの情報をエイジャックスに流していたことは不問にしてあげよう。その分エレン様の情報を余すことなくゲットできていたんだし。推し活に優秀な情報提供者は必要不可欠だもん。


 ちなみに、エイジャックスなんていうかっこいい名前のこの男性、実はエレン様の言うところの『先輩』だったりする。彼が相手なら結婚後もヨハナが仕事を辞めることはなさそうだし、わたしとも仲良しだし、個人的には二人が結ばれてくれて結構嬉しい。


 とても楽しげにわたしとエレン様のことを語っているヨハナを眺めつつ、わたしはそっと瞳を細めた。