会場中を包み込む大歓声。人々の視線が一斉にわたしとお父様に注がれた。
 先導を受け、皇族のために準備された特等席に腰かければ、それまで闘技場で頭を下げていた選手たちが顔を上げる。

 エレン様にライナス、ジーンに、他の面々。その真剣な表情に、心臓がドクンと高鳴った。



「どう、お父様? やっぱり会場で観戦すると、気分が全然違うでしょう?」


 試合を見つつ、お父様に声をかける。今はジーンと魔術師との試合が行われている最中だ。


「そうだな、とても楽しいよ。それにしても、ジーンはさすが、おまえの近衛騎士と言ったところだろうか」

「当然! もしも予選落ちなんてしていたら、近衛を解任しなきゃいけないところだったわ」


 えっへんと胸を張り、わたしは微笑む。

 普段その実力を目の当たりにする機会はないけど、ジーンはものすごく強かった。
 遠距離攻撃を得意とする魔術師に対して、臆することなく飛び込んでいき、容赦なく木刀を突きつける。

 対する魔術師は物理攻撃にめっぽう弱い。魔術師はジーンの剣撃をなんとか魔法で弾いていたものの、防戦一方だ。
 これでは埒が明かない――魔術師が反撃しようと大きく杖を掲げたその瞬間、ジーンが剣の柄で魔術師の腕を攻撃する。杖がポトリと地に落ちる。
 剣先を喉元に突きつけたら終わり。試合終了だ。すぐに大歓声が沸き起こった。