「うっ……⁉」


 次いで、騎士がうめき声を上げながら片手を押さえる。刀はやがて大きく宙を舞い、それからエレン様の手にそっと収まった。

 騎士は呆然としながら、自分の手のひらをまじまじと見つめる。彼は己が武器を奪われたことを認識すると、今度はエレン様に向かって殴りかかっていった。
 エレン様が静かに杖を掲げ、騎士がもう一度うめき声を上げる。


「腕が……動かない…………」


 光の輪が騎士の身体全体を包む。身体がその場に縫い留められ、前のめりに倒れる。騎士にはもう手の打ちようがない。勝負ありだ。


「エレン様……!」


 途端に大歓声が沸き起こった。わたしの声援なんて綺麗に掻き消されていて、その一部になれているかすらわからない。

 けれど、エレン様はわたしを見ながら、とても嬉しそうに微笑んでくれた。わたしに向かって手を振り、それから愛しげにこちらを見つめる。


『ちゃんと見ていてくれましたか?』


 エレン様の唇が動く。頬がものすごく熱くなった。