「結局見に行くんじゃないか……公平性云々言ってたのはどこへ消えた?」

「それとこれとは話が別! だって、推しだもん! 贔屓にするのは当たり前でしょう?」


 今からしようとしているのは皇女ヴィヴィアンとして選手たちの頑張りを称え、配偶者を選ぶための観戦ではなく、個人としてただただエレン様を見たいがための行動だもの。公平性なんて概念はゴミ箱行きだ。


「まあ、そう言うだろうと思っていたが……エレンは負けないんじゃなかったのか?」

「そうよ! エレン様は負けない! 絶対絶対誰にも負けないんだけど、そもそも勝ち負けの問題じゃないのよ。なにがあっても、エレン様の試合だけは直接見なきゃ。だってわたし、エレン様の一番のファンだもの!」


 カーディガンを羽織り、勢いよく控室から飛び出す。そんなわたしを、お父様は呆れたような、どこか嬉しそうな表情で見送ってくれた。