「吹っ切れたというか……わたしはただ、エレン様が一番だって思っているだけよ」

「それは元々そうだろう? おまえにとっての一番は、この4年間エレンのままだ。そうじゃなくて、エレンが優勝したら、ヴィヴィは素直に求婚を受け入れるんだろう? 違うのか?」


 お父様がわたしを見つめている。口調は軽いけど、真面目に聞いているんだってわたしにもわかる。深呼吸を一つ、わたしはこくりとうなずいた。


「違わない。もしもエレン様が勝ったら、そのときは……ちゃんとする」


 わたしの言葉に、お父様は黙って頭をポンと撫でてくる。途端に、これまでのやり取りとか、いろいろ思い出しちゃって、なんだか目頭が熱くなった。いつだってお父様は、皇女としてのわたしだけでなく、わたし自身の幸せを願っていてくれたから。だからこそ、エレン様との結婚を望んでくれていたから。


「――――いけない! 次、エレン様の出番じゃない! ヨハナ!」

「はい、ただいま」


 わたしの合図を受けて、ヨハナや他の侍女たちがすぐに飛んでくる。取り囲まれること数秒、わたしはヴィヴィアンからリリアンの出で立ちへと早変わりした。