その日、闘技場は熱気に包まれていた。
 騎士や魔術師、その家族や帝都の民たちが押し寄せ、大歓声が湧き上がる。

 それもそのはず。

 今日、ここで行われているのはこの国の頂上決戦。騎士や魔術師たちが己の技と力を見せつけ合い、そのトップを決めるための戦いなのだから。


(いいなぁ〜〜! 早くわたしも直接会場に行きたいなぁ……試合を見せてほしいのに…………!)


 こういうとき、王族は遅れて登場するものと相場が決まっている。下位トーナメントは見る必要がない、見せるべきではない、という考えらしい。

 だけど、この闘技場にエントリーできるだけでも、騎士団と魔術師団のなかで上位の実力者だ。だって、彼らはこの二週間の間に、熾烈な団内予選を勝ち抜いた人たちなんだもの。


「お父様、わたしが皇帝になったら、このくだらない習わしは廃止しますからね。こんな小さなモニターからじゃなく、直接試合を見たいんだもの」


 現在、わたしとお父様は皇族用の控室で試合を観戦している。会場で観戦している魔術師の視界とモニターとをつなぎ、試合の様子を見せてもらっている状態だ。これじゃ自分が見たい方角を見れないし、音声はほとんど入ってこない。ハッキリ言ってつまらないのだ。