唇が震える。声が上手に出せない。恥ずかしくて、エレン様の顔がまともに見れない。
 これは――――この感情は、これまでの『好き』とはどうやったって違う。


「――――好きです」


 エレン様が大好きです。
 ようやく絞り出せたその言葉は、バカみたいに小さくて、震えていて、情けないほどか細かった。

 エレン様も呆れてしまったんじゃないか――――そう思っていたのに、彼は泣きそうな表情で笑いながら、わたしと額を重ね合わせた。


「良かった……」


 心底嬉しそうなエレン様の声。
 どうしよう、目頭が熱くなる。感情が、涙が込み上げてくる。

 愛しくて――――エレン様があまりにも愛しくて、たまらない。このままギュって抱きしめたい――――これまで感じたことのなかった想いが、わたしのなかに湧き上がってくる。


「俺、絶対勝ちますから」

「うん……」

「絶対、絶対勝ちますから」

「うん」


 エレン様、頑張って。
 誰にも負けないで。

 勝って、それからわたしと――――そんな言葉をまるごと綺麗に飲み込みながら、わたしはエレン様と見つめ合うのだった。