これまで、わたしはリリアンの姿で、何度となくエレン様が「好き」だと口にしてきた。

「エレン様が好きです!」
「あなたが世界で一番です!」
「大好きです!」

 ――――そんな言葉を臆面もなく。
 躊躇なんて一つもなかった。だってそれは、わたしのなかの一番大きくて大事な感情であり、純然たる事実だ。誰に聞かれても恥ずかしくない――――むしろ聞かせて回りたいぐらいだった。

 だけど、悲しいかな。今のわたしにはエレン様が「好きだ」って即答できない。


 エレン様のことが好きなのに。
 どうしようもないほど大好きなのに。
 好きで好きでたまらないのに。

 想いはこれまでよりもずっとずっと強くなっているというのに、好きの種類が変化していくことで、ひどく臆病になってしまう。言葉にするのがなんだか怖くて、わたしはゴクリと息を呑む。


「……もしもヴィヴィアン様が俺のことを恋愛対象に見れなくても、俺はあなたを諦めるつもりはありません。俺はヴィヴィアン様のことを心から想っていますし、世界で一番あなたを幸せにできるという自信があります。けれど俺は、あなたの気持ちも大事にしたい。ですから、ヴィヴィアン様の今の正直な気持ちを聞かせていただけませんか?」

「エレン様……」


 エレン様でも不安になることがあるんだろうか? わたしがそうであるみたいに、臆病になってしまうのだろうか?