エレン様は話し終えると、わたしのことをまじまじと見つめてきた。熱い眼差し、真剣な表情。全身がものすごく熱くて、息がとても苦しくなる。


(知らなかった)


 あのとき、あの女の子に魔法をかけたのはエレン様だったんだ。おかしいな? エレン様が書いた書類には全部目を通していたはずなのに――――誰かが意図的に隠していたのだろうか? 
 どちらにせよ、はじめて聞くことのオンパレードで、わたしは驚きっぱなしだ。


「――――わかっていただけましたか? 俺はあなたに神格化されるような人間じゃない。むしろ、どこにでも存在する普通の男なんです。あなたに恋するただの男なんですよ」


 エレン様が問いかけてくる。わたしはウッと言葉に詰まった。


「わたし……わたしは…………」


 どうしよう? どうしたらいい? 

 わたしったらエレン様がこんなふうに想ってくださっていることを知ってなお、わたしじゃエレン様に似合わないって――――わたしたちの結婚が解釈違いだって駄々をこねるの?

 エレン様は本当のわたしを知った上で、わたしのことを好きになってくれたのに。結婚したいと望んでくれているのに。そのために戦地に赴いて、危険な想いまでしたっていうのに。

 わたしは本当に、それでいいの?