「あれ? 今日はいつもとリボンの色が違うんだね」

「あっ、これですか?」


 ふと視線を上げてみれば、いつもとリボンの色が違う。いつもは藤色の髪留めをしていることが多いのに、今日は赤地にレースのあしらわれた愛らしいリボンだ。リリアンにしては珍しい――――けれど、妙に既視感がある。


(いつだろう?)


 密かに首をひねる俺に、リリアンはふふっと小さく笑った。


「可愛いでしょう? 実はこれ、小さな女の子にプレゼントしてもらったんですよ! わたし、その子の気持ちがとっても嬉しくって! 大事にしようと思ってるんです」

「プレゼント……」

(あっ……!)


 既視感があって当然だ。なぜならこれは、先ほどヴィヴィアン様が街で女の子にもらったものと同じだった。


 まるで、欠けていたパズルのピースが見つかったときのように、いろんなことが腑に落ちていく。
 
 訓練中の熱視線、ヴィヴィアン様から魔術師団に寄せられた多額の寄付、贈り主のわからない誕生日プレゼント。俺への愛情で構築されたこのカフェと、それからリリアン。すべては一つに繋がっていたんだって。


「そうか……」


 全部、君だったんだね――――本当はそう言って抱きしめたかった。口づけてしまいたかった。愛しくて、たまらなくて、涙が零れ落ちた。


「よかったね。似合っているよ、とてもとても。すごく可愛い」


 本当に、心から彼女のことを可愛いと思う。リリアンは真っ赤に頬を染めながら「ありがとうございます!」と口にした。