(自分の誕生日なんて心底どうでもよかったはずなのに)


 今はもう、俺のことを自分よりも大事にしてくれる人がいる。幸せを願ってくれる人がいると知っている。だから俺は、以前よりも自分を大事にする。少しでも自分が嬉しいと思うことをする。


 カフェに着くとすぐに「いらっしゃいませ!」という挨拶が返ってきた。


「まあ、エレン様。まさかこの時間からいらっしゃっていただけるなんて……さすがに想像しておりませんでしたわ」


 出迎えてくれたのは、先輩がお気に入りのジョアンナという店員だった。いつもならリリアンが出迎えてくれるのに――――一抹の寂しさを覚えつつ、俺は会釈をした。


「すみません、ジョアンナさん。こんな時間に。もうラストオーダーは済みましたか?」

「いいえ! いいえ! 喜んでご提供させていただきます。ですが、あの……少しこちらでお待ちいただけますか?」

「……? はい」


 一体どうしたのだろう? ジョアンナが急いで厨房に戻っていく。
 それからほんの数秒後のこと、今度はリリアンが厨房からやってきた。