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 帝都に着き、ヴィヴィアン様一行と別れたあと、俺たちは魔術師団に向かった。既に勤務時間外のため、同僚の魔術師たちはほとんどが帰宅している。
 俺は自分の席に座ると、筆ペンを手に取った。


「なに? おまえ、今から仕事する気? 今日ぐらいは早く帰れって。誕生日だろう?」


 先輩が呆れたような表情で口にする。俺はそっと微笑んだ。


「報告書を仕上げておきたいんです。ただの自己満足ですから、先輩は先に帰ってください」


 今日の出来事を、ヴィヴィアン様について感じたことを、早く形にしておきたい。先輩は「あんまり遅くなるなよ」と釘を差し、魔術師団をあとにした。


 報告書を書き上げると、俺は職場を出た。


(さてと。今から行ってぎりぎりラストオーダーに間に合う……かな?)


 ちらりと時計を見遣りつつ、俺はカフェのほうへと足を向ける。
 先週もらったシフト表には乗っていなかったし、リリアンはきっと店にはいないだろう。けれど、カプチーノを飲むだけで、俺の一日の疲れが癒えるんじゃないか。嬉しいと感じるんじゃないか。そうすれば、リリアンは喜ぶんじゃないか、なんてことを考える。