「どう? 似合ってる?」

「わぁぁあ! 素敵、素敵! とっても綺麗!」


 少女は満面の笑みを浮かべながら、何度も何度もうなずいた。


(うん……とても綺麗だ)


 なんの変哲もないリボンのはずなのに、ヴィヴィアン様が身につけるだけでそれは極上の一品へと変わる。なにより、なんの躊躇いもなく少女がくれたものを身につけるその心根が美しい。俺には眩しく感じられた。


「それじゃあお返しに、お嬢ちゃんにはわたしのリボンをあげるね」


 ヴィヴィアン様はそう言って、先ほどまでご自身が身につけていたリボンを少女に渡した。
 少女は飛び上がらんばかりに驚きつつ「いいの⁉」と大きな声を上げる。


「うん! 新しい宝物にしてくれると嬉しいな」

「するよ! 皇女様からもらった宝物! とっても大事にする!」


 ヴィヴィアン様は微笑みながら少女を撫で、髪の毛を綺麗に結ってやる。


「それから、今度からわたしに話しかけるときは走ってきちゃだめだよ? 危ないものを持ってるって勘違いされちゃうからね?」

「うん、わかった! 気をつけるね!」


 少女と指切りをしながら、ヴィヴィアン様が目を細める。


(皇女ヴィヴィアン、か)


 このときまで俺は、皇女としてのヴィヴィアン様を本当の意味で知らなかった。
 けれど、この人の臣下であることを誇らしいと思う――――俺は一瞬にして、君主としてのヴィヴィアン様に心を奪われていた。