【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜

「あのね、これ、あたしの宝物なの! 皇女様にプレゼントしたかったの」


 目を凝らして見てみれば、それは細長い紙片――――リボンのようだった。茶色に近い赤色、周りにはレースが施されたそのリボンは、とても高級品とは言い難い。当然、皇女が身につけるような品ではなかった。


「いいの? でもこれ、お嬢ちゃんの宝物なんでしょう?」


 ヴィヴィアン様は言いながら、ちらりとこちらを見つめてくる。姿は見えずとも、魔術師たちが同行していたことに気づいていたのだろう。『下ろしてあげて』と表情が訴えていたので、俺はそっと少女を地面に下ろした。


(ともすれば顔をしかめる令嬢もいるだろうに)


 自分にはとても似合わないと――――バカにされたと感じる貴族は多いだろう。けれど、ヴィヴィアン様は心から喜んでいるように見える。


「うん! いいの! プレゼントしたいの! 皇女様、とっても可愛くて素敵なんだもん!」


 そう口にした少女の瞳は、キラキラと光り輝いていた。
 俺はあの目をよく知っている。俺を見つめるときのリリアンの瞳だ。そう思うとなんだか親近感が湧いてきて、俺は思わず目を細めてしまった。


「嬉しい! ありがとう。それじゃあ遠慮なくいただくわね」


 ヴィヴィアン様はそう言って、それまでご自分が着けていたリボンを従者に預け、少女がくれたリボンをその場で結ぶ。