「だって……なんか! なんかうまく言えないんですけど……!」


 将来嫌われるおそれは低いとわかった。エレン様が本当にわたしのことを好きになってくれたんだってこともちゃんと理解した。
 だけど、自分のなかでやっぱりまだ割り切れていない部分――わだかまりがある。だから、このまま勢いに任せて「はい!」ってエレン様の手を取るわけにはいかないっていうか……。


「うーん……ヴィヴィアン様は俺のことをよく神格化していますけど、俺は他の人と変わらない、ごく普通の男なんですよ?」


 エレン様はそう言いながら、顎にそっと手を当てる。自分でも訳のわからないわたしの葛藤に必死に答えようとしてくださっているのが伝わってきて、胸がキュンと疼いた。
 だがしかし。


「いえ、それは違います。エレン様は神の愛し子です。神様そのものです。この世の中の誰よりも尊くて素晴らしい男性なんです。ですから、ごく普通だなんてそんな評価、わたしが認めません」


 どんなに嬉しくとも、この部分だけは――――エレン様が特別な存在だってことは譲れない。譲るわけにはいかない。わたしはムッと唇を尖らせた。