「嫌だぁ……エレン様、わたしのこと、嫌いにならないで……嫌いにならないで」


 どうしよう、さっきから涙がとまらない。嫌な想像ばっかりして、心が潰れてしまいそう。

 だって、エレン様に嫌われちゃったら、わたし、生きていけないし。絶対、生きていけないし。


 だからこそ、推しは遠くで愛でるほうがいい。一方的に思っているぐらいが丁度いいのに。


「嫌いになんてならないよ」


 エレン様が言う。涙で視界がぐちゃぐちゃで、どんな表情をなさっているのかちっとも見えない。
 だけど、わたしがエレン様ならこんなめんどくさい女は嫌だ。さっさと帰りたいと思うし、うっとうしいと思う。わかっているのに……早く泣き止まなくちゃと思うのに、無理。どうしてもとまってくれない。


「ごめんなさい、エレン様。わがまま言ってごめんなさい。……涙、とまらなくてごめんなさい」


 ああ、もう本気でダメだ。子供よりもずっとたちが悪い。
 エレン様のことになると、わたしはわたしじゃなくなってしまう。全然制御が効かなくなる。こんな自分、嫌なのに。エレン様に見せたくないのに。自分じゃどうすることもできない。