「ねえ、そんなに嫌なの? 俺が結婚するの」

「…………はい。嫌です」


 エレン様は気を取り直し、わたしに質問を投げかけてくる。もはや取り繕っても意味がないので、わたしは正直な気持ちを答えることにした。


「どうして嫌なの?」

「だって! エレン様にはもっと……もっと相応しい女性が存在するんじゃないかなって思うし、そもそも結婚なんて似合わないっていうか、こんなに急いでしなくてもいいと思うの! まだ若いんだし、帝国中を見て回ってからでも遅くないんじゃないかなぁって」

「そんな悠長なことを言っていたら、ヴィヴィアン様は他の男と結婚してしまうだろう? そもそも俺は他の女性と結婚する気はないし、ヴィヴィアン様がいいんだから」

「なんで? いいじゃない! 相手が皇女様じゃなくたって……別にいいじゃない。だって、エレン様はあの人のこと――――皇女様のことをあまり知らないでしょう?」


 その瞬間、胸がズキンと強く痛む。