「なっ! なんで撫でるんですか?」

「え? リリアンがあまりにも可愛いことを言うから、ついつい甘やかしたくなったというか……とにかく可愛いなぁと思って」

「可愛い⁉ そんな、まさか……なんですか、それ……」


 恥ずかしさのあまり、頬が真っ赤に染まっていく。

 信じられない。
 エレン様に可愛いって言われてしまった。可愛いって言われてしまった!
 リリアンはソバカスなんかも描いてるし、ヴィヴィアンに比べて地味顔に仕上げているのに。それでも可愛いって言われてしまった!

 嬉しいやら恥ずかしいやらおそれおおいやら。またもや頭の中が大パニックだ。


(それにしても、エレン様ったら、ヴィヴィアンに加えて、リリアンにまで可愛いと言うなんて)


 そんなことを簡単に――――誰にでも言っているのだろうか?
 思わず顔を上げたら、エレン様は急に真剣な顔つきになった。


「誰にでも言っているわけじゃないよ。俺が可愛いと思うのは、この世でたった一人だけだから」

「嘘ばっかり。わたし、知ってるもん。エレン様、他の人にも可愛いって言ってるでしょう? わたしだけじゃないんでしょ――――っと」


 しまった、こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
 だって、これじゃまるで、エレン様に可愛いって言ってもらえた人に――――自分自身に嫉妬しているみたいじゃない。ヴィヴィアンもリリアンも、エレン様のファンでしかないのに。