「――――こうして店で会うのは久しぶりだね」


 ヨハナがキッチンに戻ると、エレン様が早速話題を振ってくださった。とても優しい表情。わたしは、すぐさま首を縦に振った。


「はい。最後にご来店いただいたのは一年前――――エレン様が遠征に行かれる前でしたね」


 あまりの懐かしさについつい頬が緩む。


(あの日はめちゃくちゃ泣いたなぁ)


 エレン様が戦地に行かれると聞いて、怖くて悲しくて。何度も何度も「行かないで」って言おうとした。もしもエレン様が怪我をしたら。もしも万が一エレン様がいなくなってしまったら――――そう思ったら嫌で嫌でたまらなかった。

 だけど、エレン様がやりたいことなら応援しなきゃいけないって。怖くても我慢しなきゃって必死に自分に言い聞かせた。
 その間は、推し活費用もほとんど支援物資に回したし、毎日神さまにお祈りをした。どうかエレン様を無事に帰してくださいって。

 ――――それに比べたら、今のこの状況は、遥かに恵まれているのだと思う。だって、エレン様はここにいて、わたしに向かって微笑んでくれているんだもの。