(それに、ここにいると現実逃避が出来るんだもの)


 ここ数日、どこにいてもなにをしていても、エレン様との結婚のことが頭にちらついて、どうにもこうにも落ち着かない。

 だけど、リリアンはあくまでヴィヴィアンではないから。あくまでも第三者だから。自分は推しにふさわしくないなんてことを思い悩む必要はない。

 ここでは以前と同じように――――ただひたすらにエレン様を推して、サポートして、一ファンとして彼を見守ることができる。

 たとえばエレン様の瞳にわたしが映らなくても、存在を認識してもらえなくても、それで一向に構わないと思うことができる。だって、ファンって元々そういうものでしょう?


『――――ヴィヴィアン様』

(バカ)
(バカバカ)
(わたしのバカバカバカ!)


 一体なにをやってるんだろう? たった今『存在を認識してもらえなくても構わない』って言ったくせに、エレン様から名前を呼んでもらえたことを思い出すとか、ホントバカ。心臓、バカみたいにうるさいし。頬がめちゃくちゃ熱いし。

 たとえ心のなかでも、嘘をつくならもっと上手につかなきゃダメじゃない? そうじゃなきゃ、誤魔化しきれなくなるもの。――――既に結構危なくなってきているんだもの。