「それで? 今日は一体なんの用だったんですか?」

「ん? ああ。昨日、皇女様とどんな話をしたのかな? と思って。さすがにふたりきりのときのことは当事者にしかわからないからさ」


 バレたとわかった瞬間、先輩はとても直球に疑問を投げかけてくる。感心するやら呆れるやら、俺はそっと目を細めた。


「内緒です」


 別に、話自体は聞かれて困るような内容ではないけれど、なんとなく秘密にしておきたい。
 昨日のヴィヴィアン様、ものすごく可愛かったし。そんなヴィヴィアン様の反応を先輩に想像されたくないし。俺たちしか知らないことがあると思うと、なんだか嬉しくなってくるから。


「まあ、そう言うと思ったよ。しかし、おまえは皇女様がなんといおうと、結婚について譲る気はないんだろう?」

「もちろん。そのために時間をかけて、色々と布石を打ってきたんです」


 彼女との結婚を意識してから一年半。
 ヴィヴィアン様に愛されている自信はある。彼女に誰よりふさわしい男が自分であるという自信もあれば、それに見合うだけの実績だって作ってきた。
 あとは、ヴィヴィアン様が自分の感情と折り合いをつけるだけ。もちろん、それが一筋縄ではいかないことは理解しているけれど。