もしかしたら、わたしたちは視野が狭くなっているのかもしれない。急いで事を進めようとしすぎているのかもしれない。お父様がそうと気づいてくれたなら、婚約までの期間も延ばせるかもしれないから。


「まあ、いいんじゃない? 後悔しないよう、とことん追及すれば? どうせ、俺や陛下が言ったところで聞きゃしないんだろう? ヴィヴィアンは昔から、自分が本当に納得できるまで退かないもんな」

「ライナス……」


 さすがいとこ。わたしのことをよくわかっている。
 やっぱり、エレン様を除いたら、ライナスが一番皇配にふさわしいんじゃなかろうか? 推し活への理解もあるし――――そんなことを密かに思う。


「それじゃ、詳しいことが決まったら教えてよ。楽しみにしてるから」

「うん! またね、ライナス」


 ライナスの後ろ姿を見送りつつ、わたしは大きく息をつく。
 数分前まで途方に暮れていたのが嘘みたい。実に晴れやかな気分だ。

 やっぱりわたしは、迷いながらでも動き続けているほうがずっといい。
 新たな決意を胸に、わたしはソファから立ち上がるのだった。