「……なあ、おまえってそこまでしてエレン様と結婚したくないの?」

「え? それは……その…………」

「普段あんなに好き好き言ってるくせに。結婚は別物ってなんか変じゃない?」


 ライナスは神妙な面持ちで、疑問をストレートにぶつけてくる。わたしは思わずうつむいてしまった。


「わたし自身がエレン様と結婚したくないというより、エレン様の結婚相手がわたしっていうのが受け入れられないのよ」

「……いや、同じじゃない?」

「全然違う! 絶対に違う!」


 心底不思議そうな表情を浮かべるライナスに、わたしは思わず声を荒らげてしまった。


「正直、皇女の結婚相手にふさわしい人っていう考え方なら、エレン様以上の人はいないと思うの。あんなに神々しくて、素晴らしくて、美しくて――――」

「ストップ。そのくだりはもう何万回も聞いたから。それで?」

「それで――――だからこれは、エレン様以外にも皇女の夫にふさわしい人がいるんだってことを確かめるための作業なの。それが立証できたら、なにかが変わるかもしれないじゃない?」