「ヴィヴィアン、それ本気で言ってるの? 結婚相手を決めるまでの期限、あと一カ月しかないんだろう? というか、今からだと三週間ちょっとしかないと思うんだけど」


 ライナスがあっけにとられた様子で口にする。わたしは力強くうなずいた。


「皇族が思いつきで物事を言うのは珍しいことじゃないし、場所と時間を確保すればいいだけでしょう? とっても優秀なうちの従者たちなら、問題なく準備できるわ。ねえ、ヨハナ! ジーン!」

「はい、ヴィヴィアン様!」


 それまで黙ってわたしたちの話を聞いていた二人が返事をする。迷いもためらいもないその声音に、わたしはニヤリと微笑んだ。


(お父様を含めた関係各所への根回し、参加者のリストアップ、スケジュールの調整――――することは山ほどあるけど、細かい指示は不要ね)


 二人に任せておけば絶対に問題ない。改めてそう確信した。


「だけど、皇室側の準備はいいとしても、参加者側はどうかな? 準備期間が短いし、結構厳しいんじゃ……」

「そのほうが普段の訓練の成果が見えるってものでしょう? 追い込まれないとやらないような男は、そもそも皇配にふさわしくないもの。それとも、ライナスは自信がない?」

「まさか。自分で言うのも何だけど、かなり強いほうだと自負しているよ。もちろん、客観的に実力をはかる機会に恵まれていたわけではないから、結果を見ないとなんともいえないけど」

「まあ、ライナスは皇族だしねぇ。相手が手加減しているって可能性もあるよね」


 皇族に怪我をさせてはいけない、恥をかかせてはいけないという意識は、みなが当たり前に持つものだろう。なんでもかんでも必要以上に持ち上げられたりすることも多いしね。そういうのは見てたらある程度はわかるけど、完璧に判別できるかは微妙だ。